環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加への

慎重な対応を求める意見書   提案説明

 

議員番号1番、森本富夫でございます。

ただいま議題となりました、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加への慎重な対応を求める意見書」提出に関し、提案議員を代表して提案理由の説明をさせていただきます。

環太平洋戦略的経済連携協定、トランス・パシフィック・パートナーシップ略してTPPとは、20065月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効した経済連携協定EPAであり、加盟国間の経済制度、即ち、サービス、人の移動、基準認証などに於ける整合性を図り、貿易関税については、例外品目を認めない形の関税撤廃を目指しているものであります。

当初の4加盟国に続き、オーストラリア、ペルー、アメリカ、ベトナムの4カ国が新たに交渉(ラウンド)に臨んでおり、マレーシアも、参加予定を表明しているものであります。

119日、民主党菅内閣は、関係国との間での経済連携強化に向け「国を開く」という観点から農業分野、人の移動分野、及び規制制度改革分野において、適切な国内改革を先行的に推進する、と閣議決定を行い、1113日、菅首相は、自らが議長を努めるアジア太平洋経済協力会議(APEC)において、「日本は再び大きく国を開くことを決断した」と述べ、交渉参加に向けて、関係国との協議に着手することを、正式に表明いたしました。

現在の日本経済を見てみると、自動車・家電など一時は世界を席巻し、日本が世界に誇った得意分野をはじめ、輸出産業の多くは、発展途上国、特に自由貿易を進める韓国に激しくおびやかされ、貿易トップの座を奪われている分野も、多く生じてきました。

 その対応の為、多くの日本企業は、賃金コストのより低い国、海外に拠点を移し、国内の物作り産業は低迷し、多くの雇用が失われ、新規卒業者でさえ就職が決まらない、憂うべき経済情勢となっております。

 多国間の関税撤廃は、その憂うべき経済情勢を活気付け、輸出に頼る日本企業が、再び世界のシェアーを回復するチャンスとなります。米倉経団連会長は「TPPに参加しないと、日本は完全に世界の孤児になる。政府関係者には、国益をよく考えてほしい」と、関税撤廃への取り組みに期待する、との考えを表明しています。

 しかしながら、輸出相手国の関税が撤廃されると同時に、日本の関税も撤廃されます。「ゼロ関税」は各分野にわたり「価格1/4」以下の「アメリカ産コメ」等の、日本国内流通が始まります。

 日本の穀物自給率は28%・飼料用トウモロコシは全量輸入、大豆の自給率6%、小麦の自給率14%の低さです。国民の生存権を支える「穀物自給率」の確保は、国家経営の基本であり、常識であると考えます。

穀物自給率が唯一100%を超え、カロリベースでの自給率40%を支えている、日本米は太刀打ちできるのでしょうか。

 日本の農業は、外国特にアメリカと比較すると、全く条件が違い過ぎます。耕作面積が狭く、集約化・機械化を進め、いくら生産性を高めても、アメリカ農業に対する互角の競争力をつけるのは、全く無理な話であります。

 篠山市では、226集落で農業が営まれ、耕地面積は4,440ha、その内、水田面積が約90%を占めております。

また、農家戸数は、4,567戸、その内大規模に農業を営む認定農業者は、41事業者に過ぎず、9割以上が小規模、兼業農家であります。

 認定農業者が担っている農地は23割に過ぎず、他は、小規模兼業農家が頑張って頂いておりますが、最近の米価下落により、ほとんどの農家で、収支が合わないのが現実であります。日本の農家の大半は、収支以上に農地を守り、景観や環境を守り、地域を守るために、農業を続けているのです。

 民主党政府は、経済・貿易の自由化促進を前提とした、海外農産物流入による農家の破綻を避ける為、今年度から先行して、個別所得補償を実行されましたが、それを見越したように、米価は下落してしまいました。

 安い外国米流入により、今以上に米価が下がり続けると、多くの農家は生産意欲を失ってしまい、今でも困難な後継者確保は皆無に近くなり、大規模認定農家も経営が成り立たなくなります。

一部マスコミでは、何を意図しているのか、TTP参加を絶好の機会ととらえ、米を中心とした農産物の海外への輸出に頑張る農業法人等を、ヒーローのように繰り返し放送しています。

 頑張る皆様の努力には、すばらしいと賞賛のエールを送りたいと思います。しかし、そこまで条件が整った農家は、日本中のごく一部であり、現在の農業政策の中での農産物の関税撤廃は、米や畜産を始め、多くの農業部門において、壊滅的打撃を受け、農家・農村社会、そして食料生産基盤は、崩れ去ってしまいます。

 「日本の第一次産業の割合は、1.5%だ。1.5%を守るために98.5%が犠牲になっている」との、前原外務大臣の発言にある、私達農業者1.5%は、消え去ればよいのでしょうか。

長々と、慎重論を述べましたがその反面、地域の農業者の多くが兼業農家である現実を直視すれば、勤め先が確保出来てこそ、兼業が成り立ち、農地が守られていることも事実であります。

冒頭で述べた通り関税の撤廃により、経済活動が活性化を促し、雇用面の改善を多いに期待するものであります。

 以上、輸出を中心とした経済活動の活性化と、国内農林水産業の振興は、決して相反してはならないと考えます。国会及び政府におかれては、わが国の産業に関して重要な課題を包含(ほうがん)しているTPPの参加について、短期間での拙速な判断ではなく、国民の間でも十分な議論を重ねた上で、慎重かつ適切な判断をされるよう意見書を提出し、強く要望するものであります。

 なお意見書内容は、お手元に配布しております通りであります。議員各位におかれましては、お目通しいただき、ご賛同いただきますようお願い申し上げ、提案理由の説明といたします。